プロジェクト4 日本文化・思想領域


身体と社会から考える日本人の文化・思想と幸福のありかた

研究代表者 亀山隆彦 特定准教授

概要

第3期(2022~2026年度)人と社会の未来研究院・上廣倫理財団寄附研究部門では、広井良典教授の公共政策領域と熊谷誠慈教授の伝統知領域を柱として、人類学と心理学の2領域を加えた学際的視座から、「ポスト近代」における倫理とこころのあり方について考察が進められてきた。

その3年次にあたる2024年度、先行する研究プロジェクトが積み重ねた学術研究、及び社会還元活動の成果をより広く深く日本社会に届ける目的で、「日本」自体をテーマとする新たなプロジェクトを始動した。すなわち、上記4領域の研究成果をより効果的に生かす上で重要となる、日本文化・思想における「媒介的要素」をキーワードに、学術研究と社会還元の両方を進める。

プロジェクトの中心テーマとしては、これまで日本人が作り上げた各種価値観にとって「媒介的要素」となる「身体」の特質と意義について、日本文化・思想史学を中心とする複合的な観点から、全容の解明を目指す。

これまで、哲学、心理学、宗教学の諸研究を通じて、日本の社会独自の構造や価値観は、日本人における「身」の理解、つまり、心を包む身体の問題と深く関係する。それを基盤として形成された、と主張されてきた。しかしながら、当の日本人の身体観自体がどういうものなのか、詳しい内容は今も十分に明らかでない。

ここでいう日本人独自の身体観を取りあげ、古典文献学と今日の情報科学、さらに、哲学と社会思想論を組み合わせた学際的観点から分析を進めるのが、本研究の主な目的である。また、その成果に基づき、寄附研究部門における新たな社会還元の在り方を模索する。

研究プロジェクト

A 日本宗教・仏教思想に独自の身体観に関する実証的研究

前近代日本の宗教教団、特に古代・中世の仏教教団は「心」だけでなく、「身」についても多様な教説を伝えている。そこにおける身体観がいかなるものであったか、一次資料の研究を踏まえて着実に解明する。具体的には、日本各地の寺院や宗教施設に所蔵される国宝や重要文化財を含む貴重資料を調査・分析し、その中に示される身体観の構造と機能、歴史的展開の経緯等を包括的に解明する。

B 日本宗教・仏教の身体観の日本文化・思想史における意義の解明

哲学、心理学、宗教学等の成果によると、日本社会独自の文化や各種価値観は、日本人の身体観を基盤に形成されたと考えられる。しかし、それら先行研究が想定する身体観自体、統一的でなく、最新の資料調査も参照されない。その課題を踏まえ、日本宗教・仏教の身体観が、日本の文化・思想に対していかなる意義や機能を発揮するか、より着実かつ総合的に解明する。また、その成果を踏まえ、同じく日本の身体観が、アジア文化・思想に対して発揮する意義も考察する。

C 身体観から考える日本社会・文化・思想に独自の「媒介的要素」の研究

本プロジェクトを含む寄附研究部門の成果を、より広く深く日本社会に届ける上で重要となる「媒介的要素」、すなわち、橋渡し的存在について考察を進める。具体的には、上記ABの研究を通じて解明した日本人の身体観の構造、及び重層的な社会構造や各種価値観のネットワークにおける意義・機能を包括的に検討する。その上で、日本人とその文化・思想・社会における「媒介的要素」と呼びうる存在を、「通時」(歴史)と「共時」(構造)の両面から明示する。

D 新たな国際日本学研究拠点の形成

上記ABCの研究プロジェクトは、何れも研究代表者が構築した各国の日本研究者との緊密な協力関係に支えられる。この国際日本研究ネットワークをさらに展開し、京都大学人と社会の未来研究院上廣倫理財団寄附研究部門を中心に、「国際日本学」の研究プラットフォームを確立する。まず、京都大学が蓄積した日本思想学の伝統に基づき、哲学・心理学・宗教学中心にプラットフォームを組織する。次に、それを拡張し、文学・歴史・芸術、さらに政治・経済研究を含む総合的研究拠点を形成する。

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